公開日:
インフルエンサーの契約書で確認する7項目|二次利用・報酬・PR表記
この記事で分かること
PR案件を受ける前にインフルエンサーが確認したい契約書の7項目を、報酬と支払期日、二次利用、競合禁止、PR表記などに分けて解説。契約書がない案件の進め方、交渉の伝え方も紹介します。
初めてのPR案件で契約書を渡されると、よく読まずに「大丈夫です」と返してしまう人は少なくありません。企業にとっては普段どおりの条件でも、受ける側にとっては報酬や活動の自由に関わる項目が入っていることがあります。
この記事では、案件を受ける前に確認したい7項目を、想定ケースを交えながら整理します。契約書がない案件をどう進めるか、条件を変えてほしいときの伝え方も紹介します。
法律に関わる部分は一般的な情報です。個別の契約で判断に迷うときは、弁護士などの専門家に相談してください。芸能事務所やオーディション合格後の契約については、既存記事のオーディション契約書のチェックポイントと見方ガイドで解説しています。
1. 契約書がない案件でも、条件は文章にしておく
個人で受ける案件は、契約書がなく、DMやメールのやり取りだけで進むことがよくあります。その場合も、条件を文章で残しておくことが大切です。
2024年11月1日に施行された「フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス法)」では、従業員を使っている発注事業者がフリーランスに仕事を頼むとき、業務の内容、報酬の額、支払期日などを書面やメールで示すことが義務づけられました。報酬は、成果物を受け取った日から原則60日以内に支払う必要があります(出典:厚生労働省 島根労働局「フリーランス・事業者間取引適正化等法」、フリーランス・事業者間取引適正化等法の相談の手引き)。
個人のインフルエンサーと企業の取引は、多くの場合この法律の対象です。「条件をメールでいただけますか」とお願いするのは、ごく普通のことです。
2. 契約書で確認する7項目
項目1:業務内容と納品物
何を、いくつ、どの形で、いつまでに出すのかです。
投稿の種類(フィード、リール、ストーリーズ、YouTube動画など)
本数と投稿日(または投稿期間)
投稿に入れる内容(商品名、ハッシュタグ、URL、メンションなど)
投稿前に企業の確認があるか、修正は何回までか
「投稿をお願いします」だけで始めると、あとから「動画も追加で」「あと3回直してください」と言われても断りにくくなります。範囲を決めておけば、追加が出たときに料金を相談する根拠になります。
項目2:報酬の額と支払期日
金額は税込か税抜かまで確認します。「1万円」と言われても、どちらかによって手元に入る額が変わります。
支払いについては、いつ、どの方法で支払われるかを確認します。「投稿後30日以内」「月末締め翌月末払い」のように日付で決まっている方が安心です。振込手数料をどちらが負担するかも、金額が小さい案件では差が出ます。
商品提供のみ(ギフティング)の場合は、商品の内容、返却が必要か、送料をどちらが負担するかを確認します。商品をもらった場合の税金の考え方はインフルエンサーの確定申告ガイドで触れています。
項目3:二次利用の範囲と期間
二次利用は、あなたが作った投稿や写真、動画を、企業が自社の広告や販促に使い回すことです。広告配信、店頭のポップ、自社サイトへの掲載、企業アカウントでの再投稿などが当てはまります。SNSの投稿にも著作権があるため、企業が使うには許可が必要です(出典:Insta Lab「インフルエンサーマーケティングの二次利用」)。
行政書士による解説でも、写真や動画を広告バナーなどに使うには、契約書に二次利用の条項を入れておく必要があるとされています(出典:atsoho「インフルエンサーマーケティングの契約書に入れる項目」)。
受ける側が確認するのは次の4点です。
どこで使うか(SNS広告、Webサイト、店頭、チラシなど)
いつまで使うか(3か月、半年、1年、無期限など)
追加の料金があるか
加工や編集をしてよいか(文字入れ、切り抜き、尺の短縮など)
「無期限」「すべての媒体」と書かれている場合は、その分が報酬に含まれているかを確認してください。二次利用は、投稿の料金とは別に上乗せして考えるのが一般的です。
項目4:修正・削除と、投稿を残す期間
投稿後に「直してほしい」「消してほしい」と言われることもあります。契約書では次の点を確認します。
投稿前の確認の流れと、修正の回数と期限
投稿を残しておく期間(一定期間は消さない約束が入ることがある)
企業の都合で削除を求められたときの扱い(報酬は変わるのか)
項目5:競合他社の案件を受けられない期間
「契約期間中は、競合他社の商品を紹介しない」という条件が付くことがあります。確認するのは次の点です。
どこまでを競合とするか(同じカテゴリ全体か、特定の数社か)
いつまで続くか(案件の終了後も続くか)
その制限に見合う報酬になっているか
たとえば「化粧品全般、6か月間」の競合禁止が付くと、その間はほかの美容案件をほぼ受けられなくなります。範囲が広く期間が長いほど、報酬を相談する余地があります。
項目6:PR表記とステマ規制への対応
2023年10月から、広告であることを隠した宣伝(ステルスマーケティング)が景品表示法で規制されるようになりました。規制の対象は商品やサービスを提供する事業者(広告主)で、依頼を受けたインフルエンサー自身は直接の対象ではありません。それでも、クリエイターエコノミー協会は、問題を起こしたクリエイターは仕事が減り、信頼も失うと指摘しています(出典:ECのミカタ「消費者庁、2023年10月1日からステマ法規制開始発表」)。
景品表示法は故意か過失かを問わないため、知らなかったでは済まされない、という解説もあります(出典:ITmedia「新・ステマ規制のリスク」)。
契約書では次の点を確認します。
PR表記の文言と位置(「PR」「広告」「〇〇社提供」など、企業が指定するか)
投稿前に企業が内容を確認するか
表記を付け忘れた場合の扱い
企業から指定がなくても、見た人がすぐ広告だと分かる形で表記を付けておくのが安全です。
項目7:中止・解約、損害賠償、秘密保持
トラブルが起きたときの決まりです。
企業の都合で案件が中止になったとき、報酬はどうなるか
投稿が炎上したとき、誰がどう対応するか
損害賠償の上限(報酬額を上限とする書き方がよく見られる)
契約の内容や企業の情報を、どこまで話してはいけないか
秘密保持は、企業の内部の事情などを外に漏らさないための条項です(出典:マネーフォワード クラウド契約「インフルエンサー契約書」)。動画で「この案件、実は…」と話してしまうと違反になることもあるので、話してよい範囲を確認しておきましょう。
違約金が高すぎないかも確認したいポイントです。ライバー事務所の例になりますが、違約金の考え方は既存記事の違約金が請求されることはあるの?Vライバー事務所の契約内容でも紹介しています。
3. 想定ケースで見る「確認していてよかった」場面
架空の例です。
ケースA:二次利用の話があとから出てきた
コスメのPR投稿を受けたあと、企業から「この写真を広告バナーにも使いたい」と連絡が来た。契約書に二次利用の条項がなかったので、使う場所と期間を決めて、追加の料金を相談できた。最初に「二次利用なし」と確認していなかったら、断りにくい場面でした。
ケースB:支払日が決まっていなかった
飲食店の来店紹介を受けたが、支払日を決めていなかった。投稿後1か月たっても入金がなく、問い合わせると「来月以降」と言われた。メールで支払日を確認し、文章で返事をもらってから入金された。最初に支払日を決めていれば不要なやり取りでした。
ケースC:競合禁止の範囲が広すぎた
美容家電のPRで「6か月間、美容関連の商品の紹介は不可」という条件があった。気づかずにサインしてしまい、ほかのスキンケア案件を断ることになった。「同じ価格帯の美容家電に限る」など、範囲を絞る交渉ができた場面でした。
4. 契約前のチェックリスト
項目 | 確認すること |
|---|---|
業務内容 | 投稿の種類、本数、投稿日、修正の回数 |
報酬 | 税込か税抜か、支払日、振込手数料、ギフティングの内容 |
二次利用 | 使う場所、期間、追加料金、加工の可否 |
投稿の扱い | 修正、削除、投稿を残す期間 |
競合禁止 | 範囲、期間、案件終了後の扱い |
PR表記 | 文言、位置、事前確認の有無 |
中止・賠償 | 中止時の報酬、炎上時の対応、賠償の上限、秘密保持 |
このリストをスマホのメモに入れておき、案件の話が来るたびに一つずつ確認するだけでも、トラブルはかなり防げます。
5. 条件を変えてほしいときの伝え方
条件の変更をお願いするのは、失礼なことではありません。具体的に伝えると通りやすくなります。
「広告でもお使いになる場合は、使う期間と料金を決めさせてください」
「お支払いは、投稿後30日以内でお願いできますか」
「競合の範囲を、同じ価格帯の美容家電に限っていただけますか」
「修正は2回までとさせてください」
断られた場合、その案件を受けるかどうかは自分で決められます。条件がどうしても合わない案件は、見送る判断も大切です。
6. 条件が先に見える場所で案件を探す

契約の確認に慣れていないうちは、報酬や投稿内容などの条件が最初から示されている案件を選ぶと、確認の手間が減ります。
KYAM.PUSが運営するMINEでは、企業の案件が募集票の形で公開されていて、報酬や投稿内容を見てから応募できます。応募したあとのやり取りはMINEのチャットに残るので、「言った・言わない」になりにくいのも利点です。登録と利用は無料で、スマホでプロフィール(コンポジ)を作っておけば、事務所や企業からのスカウトも受け取れます。
条件の交渉をするときは、自分の数字がまとまっていると話がしやすくなります。数字のまとめ方はメディアキットの作り方、怪しい依頼の見分け方はインフルエンサー案件の詐欺の見分け方で解説しています。案件の受け口を作っておきたい人は、MINEに登録してプロフィールを作っておいてください。30秒ほどで終わります。
7. よくある質問
口約束だけで決まった案件はどうすればいいですか?
メールやチャットで、金額、支払日、投稿の本数と期限を文章にして送り、相手から「その内容で問題ありません」と返事をもらってください。それだけでも記録として残ります。
契約書は自分で用意してもいいですか?
用意することはできますが、企業が用意したものを確認する場面の方が多いです。分からない条項があれば、サインする前に質問し、必要に応じて専門家に相談してください。
二次利用の料金はいくらくらいですか?
使う場所と期間によって大きく変わり、一律の相場は示しにくいです。投稿の料金に上乗せする形で相談されることが多いです。
ギフティングでも契約書は必要ですか?
報酬がない場合でも、投稿の本数、期限、二次利用の範囲は確認しておくべきです。商品だけ受け取って条件があいまいだと、あとで「話が違う」となりやすいからです。
未成年でも契約できますか?
案件によっては保護者の同意が必要です。18歳未満の場合は、契約書を保護者と一緒に確認してください。
8. まとめ
契約書がなくても、条件は文章で残す。企業には条件を示す義務がある場合が多い
確認するのは、業務内容、報酬と支払日、二次利用、修正と削除、競合禁止、PR表記、中止と賠償の7項目
二次利用は、場所、期間、追加料金、加工の可否を決める
競合禁止は、範囲と期間が報酬に見合うかで判断する
条件の変更は、具体的な言葉でお願いすれば通ることが多い
これからPR案件を探す人は、既存記事のPR案件のもらい方と、条件を見てから応募できるMINEをあわせて使ってみてください。所属を考えている人は、インフルエンサーは事務所に入るべき?も参考になります。
