小学六年生の伊月は、転校先の小学校で友達を作るために「面白い人」にならなければと思っていた。ある時、クラスで人気者の雅斗が、YouTuberの鬼ごっこ企画を面白いと言う。それを聞いた伊月は、近所の書店を使って自らも鬼ごっこ動画を撮影してみる。それは、自前の絵本(『はだかの王様』)を書店の棚から盗んだように見せかけて店員から逃げる、という内容のものだった。追ってきた書店アルバイトの綾芽に説教をされ、「もっと面白いこと考えるから!」と言い返す伊月。 翌朝、学校近くで、一眼レフカメラを持った怪しい人物を目撃した伊月は、教室の後ろ黒板に「盗撮犯に注意!」と不審者の絵を描く。絵に落書きを施し、犯人を見つけて盗撮し返そうと盛り上がる生徒たち。伊月は、自分が提供したネタで盛り上がる彼らを見て満足気な様子でいた。 放課後、彼らよりも先に盗撮犯を見つけようと意気込んでいた伊月は、その正体が綾芽であることを知るが…。綾芽と話し、彼女の撮った写真を見る中で、綾芽が盗撮犯なんかではないのだと確信する。しかし、伊月のクラスでは、犯人に関して飛び交う噂や憶測によって綾芽と盗撮犯が結びつきそうになっていた。同時に、黒板の落書きはエスカレート。盗撮犯の絵はズボンが脱がされ、裸にされてしまう。 綾芽のもとへと走り、全てが自分のせいであるのだと話した伊月は、綾芽にある提案をする。それは、伊月自身が盗撮犯に成り代わることで、綾芽にかかる疑いを晴らすというものだった。綾芽から借りた服で盗撮犯の姿になった伊月は、クラスメイトらの目の前を、綾芽に追われながら走った。そうして辿り着いた丘で、伊月は『はだかの王様』に登場する一人の子どものように、自分だけが知っている ”綾芽の本当” を皆に伝えようと決意する。 翌朝、盗撮犯の絵にズボンを書き足した伊月は、生徒らに真実を伝えようと声を上げる。 みんなとの違いに悩んでいた小学生が、来たばかりの新しい町で自分だけの「面白い」を見つける物語。